carezzando



うなだれた愛音は素直にその言葉に従った。
練習不足や同じミスを繰り返しすぎるときなど、これまでにも何度も受けてきたお仕置き。
楽器を置きなさい、という言葉が、いつもお仕置きの宣告だった。
壁の端にかけてある物差しを取って柏木に渡し、グランドピアノの端に手を付いて顔を伏せる。

「愛音、今日はこっちだ。」
「え…?」
物差しを受け取った柏木は、それをピアノの上に置いたまま、自らはソファに座って膝をぽんぽんと叩いている。

「今日は厳しくしよう。お前が本当に反省するまで。」
初めてのことに愛音は戸惑う。
今日の柏木は相当怒っているらしい。
「さあ、早く来るんだ!!」
これもまた初めて聞く、柏木の強い口調に、愛音はあわてて彼の膝の上に身体を差し出した。

「先週も先々週も、毎日の練習を欠かしていたからお仕置きをしたはずだ。それなのにまだ分からないようなら、可哀想だがもっと厳しくするしかない。おまけに今日は嘘までついて…音楽をなめきったその態度を許すわけにはいかないよ。」
背中の上から柏木の言葉が降ってきたのを聞いた瞬間、お尻が空気に触れるひんやりした感触があった。
「っ!先生っ!?」
下着まで下ろされてお尻をむき出しにされたショックで思わず抵抗するが、後ろに回した手はがっちりと固定されて動きも取れない。

ーばしっ!!

かなり強めの1打が振り下ろされる。
「いたいっ!!」
裸のお尻に振り下ろされたのは物差しではなく平手だったが、それでも服の上からしか打たれたことのなかった愛音には今までに経験したことの無い痛みだった。
そのあまりの痛さに、じたばたと暴れる愛音。
柏木はその腰を力強い手で押さえつけて、さらに叩く。

ーばしっ!ばしっ!ばしっ!ばしっ!!

みるみるうちに桃色に染まっていく愛音の尻に、さらに容赦なく、一打、もう一打と平手を加えていく。
柏木は無言だ。
無言のまま、ひたすら、しかし冷静に愛音を打ち据えている。

「いたい…っ!!もう、ムリです!!先生っ…お願い、許してくださいっ!」
身をよじりながら涙を流して懇願する愛音の声にも、全く聞こえないかのような態度で、叩く手を緩めようとはしない。

ーばしっ!ばしっ!ばしっ!ばしっ!!

「せん…せいっ…!ごめんなさい…っ!もう練習サボったりしません!絶対に!!本当にごめんなさい!反省…っ…していますっ!!」

ーばしっ!ばしっ!ばしっ!ばしっ!!

しきりに謝り、もうサボらないという誓いが聞こえ出してしばらくすると、柏木は叩く手を休めた。
たっぷり100回以上は叩かれて、愛音の尻は真っ赤になってしまっている。

「ほんとうに…ごめんなさい…ごめんなさいっ!」
ひっくひっくとしゃくりあげながら謝る愛音の背中を見ながら柏木は、これで懲りてくれたかな…と思いつつ、愛音を助け起こして目の前に立たせ、なお厳しい声音を崩さずに言った。

「その言葉は本当に反省したからなのか、それともお仕置きから逃れたいからなのか…」
「反省してます…!ほんとうに!!私が、たるんでいたんです!」
「では物差しを持ってきて、いつものようにピアノに手を付いて。本当に反省しているなら、大人しく受けられるな。最後に10回、それで終わりだ。」

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